深山の雰囲気と潮の香りが同居するローカル鉄道。
時代ロマンあふれるレトロ列車も運行されます。
三陸沿岸を南北に結ぶ三陸鉄道。昭和59年、全国初の第3セクター方式の鉄道として誕生した鉄道で、久慈〜盛間を結ぶ区間をリアス線と呼んでいます。今回のレポートでは、普代駅から久慈駅方面へ向かう列車に乗って、その車窓や鉄道の旅の気分をチョッピリ楽しむこととしました。
列車の発車時間にまだ間があるので、普代駅に併設されているお店を訪ねてみました。
まず訪れたのは「ふだいのアンテナショップあいで 電話0194-35-2411 9:00~17:00 」。第三セクター株式会社青の国ふだいが運営する観光物産施設です。村特産の昆布やわかめ・干ししいたけやほうれん草などのほか、ふだいのねばり・こぶじお・こんぶ饂飩・昆布らーめん・Kon Pas(昆布の粉末を練りこんだ半生パスタ)などのオリジナル商品も豊富に取り揃えてあります。ここでしか味わえない「青の国バーガー」や「こんぶソフト」も人気。“あいで”とは普代の方言で「一緒に行こう」という意味です。
さて、ホームに2両編成のディーゼルカーが入ってきました。車内は4人掛けのBOX席スタイル。もちろん窓が開くので潮騒を身近に感じながらの旅に期待感が高まります。乗務員は運転手のみのワンマンカー。無人駅では料金後払い式のワンマンバスのように、乗車時に整理券を取り、降車時に料金箱に運賃を支払うスタイルです。
「グァンワンワン・・」と、ひときわ高いエンジン音を響かせながら列車は普代駅を出発。普代の町並みを臨みながら普代川を渡ると、あっという間に車窓は深山の趣きに。気がついたらトンネルの中。で、トンネルを抜けたと思ったらまたトンネル。海岸がすぐ近いというのにせっかくの海岸美を楽しむことができません。普代駅から5分ほどで列車は次の駅に到着。駅名は「白井海岸」。ホームとトンネルの出口が同居する無人駅で、海岸と銘打ちながら海の姿は皆無。周りの風景は、緑濃い山中のど真ん中という感じです。
白井海岸駅出発と同時に再びトンネル。これがまた全長約2kmもある長いトンネルです。しかも、やっと出たと思ったらまたすぐトンネル。結局、普代から掘内までわずか10kmほどの区間にトンネルが8箇所もありました。
それでも、普代村3つ目となる堀内駅が近づくにつれ海の存在を、なんとなく感じるように。トンネルとトンネルの間のわずかな区間から、まついそ公園の姿を見ることができました。さらに、ポスターでもお馴染みの大沢橋梁にさしかかると、列車は徐行。スピーカーからは名所案内のガイドが流れてきます。ここまでくると堀内駅はもうすぐ。国道45号を上に、下には太平洋を一望する景観に優れた駅で、ホームからは太平洋とともに生活している地域の人たちの暮らしぶりをも垣間見ることができるはずです。この先、安家川にかかる大きな橋を渡るとお隣の野田村へ。この先、陸中野田駅までは、進行方向右手に太平洋の姿を見ることができます。
さて、三陸鉄道には、通常スタイルのディーゼルカーのほか、通称「レトロ列車」と呼ばれるオシャレな列車も走っています。内装は時代性を考慮した古風なシャンデリアと壁面から下がったスズラン灯、中央通路に敷かれたジュータンなどでレトロな雰囲気を演出。現在、宮古・久慈間をサーモン号として1日1往復しています。料金は通常列車と同料金。今年初春には新型レトロ列車も導入され、ますますその魅力がアップ。ちょっと豪華でファンタジック。特にあたりが緑に染まる春から盛夏は、その魅力が最も発揮される時期。子供から大人まで家族みんなで楽しむことができます。